2017年02月03日

この前「インドの左手は不浄だ」って話をした(関連エントリ:インドでは食事のときに左手をつかっちゃいけない理由を体験してみたんだけど)。なので、今日は右手のお話。インドでは食事をするとき、右手を使う。左手は不浄だから右手だけで食べるんだ。それだけじゃない。インドでは古くから手で食事をする風習がある。銀食器や箸は使わない。指先で食べる。ヨーロッパなんかでも素手で食事をする文化は最近まであった。具体的に何年くらい前から食器が使われはじめたか忘れてしまったけど、中世あたりからナイフとかでてきたんじゃなかったっけ。日本でも手で食べる習慣っておにぎりとかで今でもあるよね。だけど、不思議なのは「今日でも未だに素手で食べてる」ってこと。インド、別に鎖国していない。鎖国経済っぽい時期はあったけど、ナイフもフォークもスプーンだってあるんだよ。だけど、手で食べてるんだ。

不思議だから、ぼくも素手で食べてみた。ナンみたいな食べ物でチャパティっていうのがある。ナンはタンドール(窯)がないと焼けないから、一般家庭ではナンではなくて、チャパティを作って食べるのが一般的。成分は強力粉と薄力粉と水と塩で、それらをこねて焼いただけ。簡易なパンみたいなもの。そういうのを手で食べるのは別に不思議じゃないし、抵抗も別にない。むしろナイフとフォークで食べる方がめんどうだし。でも、インドでは水っぽいカレーもご飯にかけて、手で食べる。べちょべちょなのに、手で食べる。同じ建物にドイツ人が住んでて、たまに食堂で見かけたんだけど、そのドイツ人も手で食べてた。スープを、手で。

手で食べることはリスクでもある。インドには世界中の細菌が集まっていると言われることもあるほど、たくさんの病気が蔓延している。腸チフス、肝炎、破傷風、マラリア、デング熱…。なかでも食事のときにこわいのが肝炎。汚い水を飲んだら一発でアウト、3ヶ月は治療に専念しなくちゃいけないこともある。だから、手で食べるのってめちゃくちゃこわい。毎回かならず、きれいに石けんで手を洗う。そして、きれいなウェットティッシュで拭く。それから、食べる。

はじめてスープに手を入れた瞬間の背徳感はヤバい。今まで生きてきたテーブルマナーをすべて投げ捨てた感覚が迫ってくる。熱いスープに指をつけて、ジャガイモや鶏肉を口に運ぶ。意外と、食べるのがラクだし、いつもよりおいしい感じがする。

日本で開発経済学を研究している教授が「インド人は手で食べるけど、指先の触覚で味を想像しているみたいだ。脳も実際に反応していると何かで読んだよ」と言ってた。そーなんだーと思ったくらいで、実際にそのリソースを探したりはしていないけど、体感でわかる。指先から味が伝わってくるかんじ。

素手で食事をするとインド人の仲間になったような気がする。インド人もたまに「おぅ!手で食べてるじゃねーか!いいね!!」みたいなかんじで嬉しそうに話しかけてきたりする。そういうことを言ってくる人は外国人を意識している人で、ほとんどの人は外国人が手で食事をしていてもあまり気にしない。それくらい手で食べるのが当たり前みたい。

日本のインド料理屋でも、手で食べてみようと思ってスープに指を伸ばそうと思ったけど、さすがに周りの目が気になるし、マナー違反もはなはだしいかんじがしてしまってやめた。郷に入っては郷に従うとはこのことかと、たたきつけられた気がする。家でならいいだろうとやってみようとするけど、日本の水っぽいごはんを手でべちょべちょ食べるとなんだか不思議な感じがする。人目を隠れてこっそりとマナー違反をするかんじは楽しいんだけどね。

 


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