『考えすぎた人: お笑い哲学者列伝』清水義範(著)
パスティーシュの名手として知られる著書が哲学者についてまとめた。まとめたと言っても、著者は哲学者ではないし、哲学系の専門家でもない。哲学にゆかりある人物を並べて作り出してある種の妄想物語である。だが、これがおもしろい。
古畑任三郎のような登場人物がプラトンの著作に関する事実誤認の可能性を指摘したり、お腹がゆるくて病弱なデカルトを描いたりしている。哲学者の歴史や周辺情報についてよく調べられており、娯楽書というだけにとどまらない新しい哲学の形を味わうことができる。
なかには手抜きのような部分も見られ、ウィトゲンシュタインの話はほとんど引用とのこと。これもある種のユーモアだと思うのだが、私にはよくわからなかった。
哲学というと高尚で近づきがたいイメージをもたれやすいが、本書のような形であれば面白おかしく哲学に触れることができる。哲学と出会うきっかけとしてはよい一冊と言えるだろう。
●新潮文庫・594円
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