『オプティミストはなぜ成功するか』マーティン セリグマン(著)/山村 宜子(訳)

ポジティブ心理学では有名なマーティン・セリグマン。ポジティブ心理学は自己啓発を少し現実的な治療として体系化した学問と言って良いだろう。うつ病やその他の心理的な病気を克服するためのアイディアや訓練方法について紹介されている。邦題はタイトルがひどい。成功哲学をうたう安っぽさ漂うタイトルなので、もう少し堅実なタイトルにするとポジティブ心理学に興味がある人にも届くのではないか。現代は"Learned Optimism"なのでオプティミズム(楽観主義)入門のようなニュアンスが強いのだが、日本語のタイトルはなぜか楽観主義のことを成功と言い換えてしまっている。

自己啓発に右往左往する人もある種の精神的な欠陥を抱えている可能性は高い。現状に満たされず、新しい成功を常に追い求める姿は向上心のようでありながら、どこか底のない渇望が渦巻いているようにも見える。本書がポジティブ心理学として価値を発揮している点は診断表と豊富なケーススタディに裏付けされた、ポジティブの習慣化を推奨している点である。哲学の世界では中庸やバランス・近衛が尊重される。本書でも以下のような仕事はオプティミスト(楽観主義者)と対をなすペシミスト(悲観主義者)が重要な役割を果たすとされている。

  • 設計・安全工学
  • 技術・コスト見積もり
  • 契約交渉
  • 財政統制・会計
  • 法律(訴訟を除く)
  • 経営管理
  • 統計
  • テクニカル・ライティング
  • 品質管理
  • 人事・渉外管理

ペシミストの慎重さや未来に起こりうる危機察知の能力を認めている。しかし、それ以上にオプティミストであることでうつ病の発症率が高くなるリスク、がん細胞を退治するナチュラルキラー細胞が活性化するなど臨床実験によるデータを提示している。つまり、「個人の個性としてオプティミスト・ペシミストの偏りの程度はあるが、オプティミスト的な考え方を取り入れることは精神的・肉体的健康にも良いのでオススメですよ」ということだろう。うつ病が流行している時代だからこそ、自分がいつ同じような病にさらされるか誰もわからない。予防や改善のアイディアとするために繰り返し読みたい一冊。

●講談社

 


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