私立恵比寿中学の松野莉奈への歌声が響き渡る

「感想を言葉にできない」

素直に言ってしまえば、この言葉につきる。今まで、ライターとして書いてきた記事の本数、1,000はくだらない。しかし、これほど感情が動かされ、記事を書く手が重くなることは経験したことがない。

2017年2月9日、定刻より5分おくれて恵比寿リキッドルームに音が鳴り響いた。HERE(ヒアー)のフリーワンマンライブだ。

HEREは2008年に結成されたロックバンドで、これまでに3枚のシングルと2枚のアルバムを発表。「日本で最もハイテンションなロックバンド」と自らを語る彼らは勢いを止めることなく成長をつづけている。

HEREのフリーワンマンライブ

18:50、開場を前にして長蛇の列ができていた。19:05には会場の3割程度が埋まり、その数分後にはほぼ満席となった。フリーライブとはいえ、収容人数が約1,000人のハコを埋める集客力。さすが知名度をグングンとあげているHEREだ。私立恵比寿中学との関係が深いバンドとあって、会場にはエビズリーパーカーを着ている人も目立つ。

オープニングはアップテンポで前のめりなライブチューン「はっきよい」。メンバーの登場と同時に会場の熱は一気に上がり、序盤から全力で飛ばしていく。実は今回のフリーライブ、クラウドファンディングで資金調達しており、HEREのライブに初参戦する人もいるようだった。古参メンバーだけで盛り上がるのではなく、初見でもノレるHEREの楽曲センスが光る。

HEREのワンマンライブの様子

前半で最も盛り上がったシーンがどこか聞かれれば「間違いなくココだ!」と答える場面がある。9mm Parabellum Bulletでボーカルとギターをつとめる菅原卓郎の登場だ。HEREと9mm Parabellum Bulletは以前から親交が深い。HEREのギタリスト武田将幸は9mm Parabellum Bulletでサポートメンバーとして活躍していたこともあるほど信頼しあっている。

尾形と菅原のダブルボーカルで「Black Market Blues」を含む2曲が披露された。

9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎とHEREのコラボ

菅原がステージを後にすると、尾形はひとこと語った。

「今日はこの曲をみんなで大合唱したい。大好きな友人にささげます」

黙祷のような10秒ほどの間をあけて「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」のイントロがはじまる。この曲はボーカルの尾形が「エビ中++」に出演すると毎回流れていた、エビ中ファミリーにはなじみがある曲だ。会場は松野莉奈のイメージカラー、青色のサイリウムで埋め尽くされた。立て続けにアップテンポな「アモーレアモーレ」が演奏され、会場の一体感は高まる。

HEREと私立恵比寿中学のコラボのような一体感

その後、新曲の公開PV撮影のため、メンバーは早着替えに初挑戦。今回のハイライトシーンでもあるこのPV映像は近日中に公開されるそうだ。

撮影を終えると時刻は21:30を過ぎ、終演が近づく。

終盤へ向けて尾形は語りはじめた。

「人生なにがあるかわからない。俺はどんな小さな仕事でも全力でやっている。つらくなったら、いつでもHEREのライブにきて元気をもらってほしい」

「つらいことあったけどさ。いつか、笑顔でさ。時間はかかるかもしれない。彼女のことを話せるときがくるようにさ。僕らはがんばりましょうよ」

そう語ると尾形は声につまる。数秒間の沈黙がつづく。会場には「回帰!!」と彼の名を叫ぶ声援が響く。準レギュラーとして私立恵比寿中学と共演していた尾形にとって、今回の出来事がすぐに受け入れられないのは当然だろう。実際、彼自身がTwitterで「最初は明日歌えるか不安だった」と語っている。

尾形は「彼女」と言う表現をして、あえて「松野莉奈」という名前はあげなかった。詩的に友人へのメッセージを捧げるロックスターらしい姿勢だ。ライブの最終版へ向けて会場はひとつになり、最高潮のままフィナーレを迎えた。

HEREフリーワンマンライブのフィナーレ

自ら「日本で最もハイテンションなロックバンド」と語る通り、あばれまわり元気をふりまくライブだった。HEREが他のロックバンドと一線を画している点は「明るい元気さ」だ。彼らの演奏からは憂鬱や憎しみを感じず、ただただ元気がもらえる。新曲の歌詞にみられる「挫折こえて強くなる」という言葉の言い回しや「みなさん、ご一緒に!」とあおる丁寧さ、MC中の尾形の少し口べたで憎めないトークやメンバーの純粋に音を楽しむ姿からHEREらしさがにじみ出るのだろう。


今回のフリーライブ「死ぬくらい無料なのに愛してるバカみたい〜ロックスターに会いに行こう〜」をきっかけに、HEREのファンになった参加者も多いはずだ。終演後、会場をあとにする人の笑顔から、そのことは明らかだった。

ライブ以外の部分で個人的に感じていること

今回、HEREのフリーライブレポートを書いたが、正直に言うとここまで形に残すつもりはなかった。松野莉奈のことがあり、いてもたってもいられず急遽予定を変更して恵比寿へ駆けつけた。そして、元気をもらった。ぼくがHEREからもらった元気を、ひとりでも多くの人に伝えたかった。だから、このレポートを書いた。

フリーランスのライターとして仕事をしている身としては、公平にロックバンドとしてのHEREを紹介すべきなのかもしれないが、自分と同じような文脈でHEREのライブへたどり着き、たくさんの元気をもらったという人は少なくないはずだ。

今まで松野莉奈からもらってきた勇気や元気を無駄にせず「りななんのおかげで、こんなことができたよ」と人生を先に進めたい。だから、自分にできることは何かと問いかけて今回のライブレポートを書いた。

不器用だけどがんばっているエビ中が好きだ。数あるアイドルの中でも個人的な思い入れが強い。だから、今回の訃報をひとつのニュースとしてさらりと消化することはできない。人の命に重いも軽いもないはずだが、思い入れに差があるのは仕方のないことだ。まだ悲しみが癒えることはなく、これからもこの悲しみを背負っていくことになるかもしれない。それでも、ぼくらは辛い思いを乗り越えて、発展していこうと思えるようになれたらいいなと思っている。時間はかかるかもしれないが……。

HEREは今日、ワンマンライブをやり遂げた。さぁ、私たちはどうするのか。そう問いかけられているように感じた。嫌いな人に明るくあいさつする、がんばっている人を素直に応援する、そんな小さなことでもきっとかまわない。悲しみだけで、終わらせたくはない。少しでもいい、先へ、進んでみよう。そんな元気を今回のライブでもらうことができた。

このレポートで、ひとりでも多くの人が励まされますように。

 


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